連載コラム4 楽園ロタ島:清水と旨い食物










1.楽園の飲み物



ロタ島の楽園的飲み物の代表は、湧き水(ミネラルウォーター『ロタクリスタル』)、フルーツジュース、果実酒、ハーブティーなどだろう。

ココナッツ・ジュース(ココナッツ・ウォーター、ココナッツ・ミルク)(注1)には、私自身今まで良い印象がなかったのだが、ロタ島の物はココヤシの種類が違うのか、旨いものを見分ける力量のお陰なのか、トライした3回とも旨かった(写真)。このココナッツ・ジュースは発酵させてココナッツ・ワイン(注2)となる。口当たりが良く芳醇な風味の素晴らしい飲み物だ。






ロタ島独特の果物の一つにロタレモンがある(写真2枚)。日本のミカンを小粒にしたような色と形だが、味はライムに近い独特の香りと味わいがある。ジュースとしても、またビールなど他のドリンクに絞り落としても旨い。






**********



2.楽園の食べ物



島でとれる山海の珍味が楽園の食べ物だ。それは、島内産というだけではなく、旨くなくてはならない。まず第一に上げたいのが、果物と魚介類だ。



果物は、マンゴー、パパイア、バナナ、ココナッツ、パイナップル、スターフルーツ、サワーサップ、アボガド、ブレッドフルーツ(パンの木の実)、ロタレモンなど多彩(写真)。名も知らぬ(私が知らないだけだが)美味しいフルーツがまだまだ沢山ある。










ブレッドフルーツは1個で人1人が1日生きて行ける栄養をもつと言われる。




ロタ島には旨い食材が沢山ある。その中でも、木で熟したマンゴーの旨さは格別だ(写真)。私自身、大好物のマンゴーだが、今回のロタ島滞在で木で熟したマンゴーの本当の旨さを初めて知った。






今まで酸っぱいだけと思っていたスターフルーツが、熟せば旨いこと(当たり前か?)も知った。そして、ロタ島で初めて食べたサワーサップの甘酸っぱい独特の旨さは、クセになること請け合いだ。実はスウィートサップもあるのだが、たまたま熟した物に出会えなかった。(残念!)



さらに、ロタ島ではタロイモが絶品なのだ(写真)(注3)。農業が家庭菜園の域を出ないロタ島で、唯一農業らしいのがタロイモだろう。






魚介類は、ロブスター(写真)、エビ(写真)、魚類(写真)、貝類など。ロタ島は豊富な海の幸にも恵まれている。










ロタ島独特のロタレモン(写真)とロタペッパー(ホットペッパー)(写真)は、チャモロ料理には欠かせない。ロタペッパーは小粒で真っ赤なトウガラシだが、その辛さったら……一口で空を飛べること間違いなし! 醤油にロタレモンとロタペッパーそれに青い葉の部分を使うロタオニオンを加えたソースはチャモロ料理で多用される。






ロタレモンは『ケラグィン(ケラグェン)』(写真)という、チャモロ風の酢じめ料理では、重要な隠し味となる。これが普通の酢やレモンではダメなのだ。私は、チキン、タコ、エビ、そしてビーフのケラグィンを食べたが、どれも旨かった。インド料理のナンのような薄く焼いたパン(ティティジャスと言う)に挟んで食べるのが作法であり、それがまたよく合う。酢じめは日本料理にもあるが、独特の薬味とロタレモンのお陰で、全く別物という印象を受ける。




ロタ島滞在中、我々は意外な食べ物に何度か遭遇した。シカ肉の刺し身、ヤシガニなどその代表だろう。アボガドの刺し身もそうだ(写真)。ロタ島の木で熟れたアボガドの刺し身は、私の想像を絶する旨さだった(注4)。






さらにビックリしたのは生のココナッツの刺し身だ(写真)。フルーツ園で注文もしないのに供されたのだが、最初は何だか分からなかった。いぶかしく思いながらも、口に運ぶと……意外にも旨い。食感的には新鮮なイカの刺し身に近いだろうか。これはクリーンヒット、いや、もしかしたらホームランか。






今一つ意外な大ヒットが、ホテル・ロタ・リゾートで出されたパパイヤの細切りのかき揚げ(写真)。コリコリして、言われなければ何なのか分からない食感だ。醤油ベースのタレで食べたたこの掻き揚げはとても旨かった。肉の生産量が少ないロタ島では、あり余る果物を旨く食べられる新レシピは大歓迎だ。これらの料理を現地のチャモロ人達がどう感じるのか(実はそこが重要なのだが)まではリサーチできなかったが、日本人にとっては間違いなくご馳走だ。






**********



3.楽園から遠い飲み物と食べ物



島外からの飲み物や食べ物、島内の飲料や食材ではあっても不味い物、島内の旨い飲料や食材が手に入らないこと……これらは楽園から遠い状態だ。



ロタ島にはホテルのダイニングも含めて、合計20軒のレストランとカフェ(と言っても実質はレストラン)がある。そのうちの半数が、ロタ島唯一の繁華街(と言うのもほとんど言い過ぎなのだが…)を持つソンソン村に集中している。残りの半数はホテルなどだ。そのうちのソンソン村の5軒のレストランと3軒のホテル・ダイニングをリサーチできた。



ほとんどのレストランでの食事は、残念ながら高くて不味い。もちろん、レストラン・ベイ・ブリーズの『ケラグィン』などのように安くて旨い物もある。それぞれのレストランにも旨い物があるのだろうが、そこまで徹底したリサーチはできなかった。そんなレストランの中で、唯一の例外とも言えるのが、『トンガ・トンガ・カフェ』だ。カフェと言っても、れっきとしたレストランである。ここでは、何を注文しても旨い。しかも、エントランスも建物も素晴らしい雰囲気で、何より島の新鮮な食材にこだわっているのが嬉しい。



私の大好きなビールは、ロタ島では100%輸入だ。それもアルミ缶が大部分なのは大きなマイナス・ポイント。ビールを注文する際には、「ビンビールはあるか?」といちいち確認しないと、缶ビールが自動的に出てくる。



しかしながら、食材が島内産なら何でも良いわけではない。確かに島内産なら投入される石油エネルギー量は少なく、従って環境負荷が小さい。そして島民の雇用が確保される上に安価でもある。しかし、不味ければダメなのである。



例えば、島内で産する素晴らしいミネラルウォーター『ロタクリスタル』。このロタ島の至宝とも言える清水は、ペットボトルに詰めて売られている(写真)。このペットボトルは100%中国製だ。産業のないロタ島では致し方ないが、問題はその先だ。このペットボトルのキャップが例外なく石油臭く、折角の美味しい水が台無しなのだ。こんな状態の『ロタクリスタル』を楽園の清水と呼ぶわけにはいかないではないか。




できれば『ロタクリスタル』は不快な臭みの出ないガラスビンに詰めて流通させたい。さらにビンはリユース(物の再使用)したい(注5)。つまり、ガラスビンを洗って、繰り返し使用するのだ。この方が、ペットボトルのリサイクルより、環境負荷が小さく、何より中に入れる水が旨い。そして、島内に新たな雇用も生まれるではないか。



**********



4.「食」の自立



日本では口にすることが難しいような旨い物が沢山あるロタ島。読者の皆さんはどんな印象を持たれたのだろうか? 皆さんも食べたくなったのでは?



しかしながら、このコラムは、ロタ島の旨い物やレストランのガイドが目的ではない。「新たな楽園」を創造するために、「」の現状を確認してみたかったのだ。素晴らしい「」資源が豊富なロタ島だが、「新たな楽園」へ向けてこれから何をしたらよいのだろう。



実は、ここからが本題なのだ。



ロタ島で我々が目指したいのは「」の自立だ。

「自立」とは「依存からの脱却」を意味する。現状では、ロタ島の食材はアメリカ合衆国を中心として、極端に海外に依存している。これはロタ島に何軒かあるスーパーに行ってみれば明らかだ。棚に並んでいるのは海外からの食材がほとんどである(写真2枚)。








ロタ島産の食材だけで完全に島内の需要に応えることができるかどうかは怪しい。また島民のアメリカ指向が続く限り、「」の自立はなし得ないだろう。しかしながら、ロタ島の人達は本当にアメリカ流の食生活とライフスタイルに満足しているのだろうか? 何にでもケチャップとマスタードをかける食事を、本当に旨いと思い、心からの喜びを感じているのだろうか?(写真2枚)






私にはそうは思えない。

アメリカ流のライフスタイルがモダンでカッコイイと頭に刷り込まれているだけなのではないか。その証拠に、普段はチャモロ料理(ヤシガニ、ロブスター、シカ、魚、タロイモなど)を食べていながら、客人が来るとそれらを隠して、アメリカ流の肉を中心としたバーベキューを供すと言う話さえ聞いた(写真)(注6)。強くて豊かな国アメリカのイメージとも重なった「バーベキュー」が現代のステイタスシンボルでさえあるようだ。






」の自立は、石油エネルギーの投入量を減らす。それは当然のことながら環境負荷を抑え、人々の経済的負担も減らしてくれる。さらに、最も重要なのは、住民の感じる「満足・充実感・豊かさ・幸せ」などに大きく貢献することなのだ。



**********



」の自立は重要だが、実は「」だけが自立してもダメなのだ。



本当は我々が生きて行く上での基本要素である「衣・食・住・水・エネルギー・資源」の自立を目指したい。それにより我々の日常生活における石油エネルギーの投入量を劇的に減らし、石油依存から脱却できる。これが「脱石油」だ。そしてそれは、石油エネルギーの代わりに「太陽エネルギー」を有効利用することによって実現できる。

太陽エネルギーとは何なのか、どう利用すればいいのか? これらについては次回の連載コラム5で詳しくお話したい。






2006年10月5日、スイス近自然学研究所にて




*****************




注1)ココナッツ・ジュース(ココナッツ・ウォーター)

ココナッツ(coconut)はココヤシの果実のこと。固い繊維質の殻の内部には胚と胚乳がある。白色で固形の胚は食用になる。我々が普通ココナッツと呼んでいるのはこの部分を乾燥させたもののことだ。ココナッツ・ジュースは、この胚の内部に溜まる液汁(胚乳という)のことだ。若い(まだ外側が緑色)ココナッツの胚乳は薄い白濁をなし、ほのかな甘味を持っている。

ロタ島ではこの液汁を、『ココナッツ・ミルク』『ココナッツ・ジュース』『ココナッツ・ウォーター』などと呼んでいる。



注2)ココナッツ・ワイン

チャモロ語ではトゥーバという。ココヤシの胚乳(ココナッツ・ミルク、ココナッツ・ジュース、ココナッツ・ウォーター)を発酵させたもの。ロタ島の名物の一つであるが、生産量が少ないせいか、いつでもどこでも手に入る物ではない。





注3)タロイモ

サトイモ科サトイモ属(Colocasia)の植物の総称。世界の熱帯から温帯にかけて広く栽培され、主要な食糧となっている。主に地下茎(イモ)を食す。オセアニアのタロ、アフリカのココヤム、日本のサトイモなども変種として含まれる。

マリアナ諸島にはどの島にもタロイモが育つが、ロタ島産の物が、気候・地質・水などの条件のせいか、格別に旨いと言われる。





注4)アボガドの刺し身

アメリカのカリフォルニアでマグロのトロの代用として発明されたとされる。アボガドを使った太巻きの一種であるカリフォルニア巻が有名。カリフォルニア巻はヨーロッパのスシバーでは一般的な出し物だ。トロその物とは言わないまでも、食感がよく似ている。いや、似ているから良いのではなく、これそのものが単純に旨い。





注5)ガラスビンはリユース(物の再使用)したい

環境に配慮した資源の利用に関して、優先順位の原則がある。



 1)リデュース:使用量の減量

 2)リユース:物の再使用

 3)リサイクル:資源の再生利用



だ。リデュースとは、資源の使用量の「減量」のことで、端的に言えばライフスタイルの転換を意味する。つまり使い捨てのライフスタイルからの転換だ。

次がリユースで、物の「再使用」のこと。形を変えずに、何度も繰り返し使用することだ。ビンを洗って再び使ったり、不要になった電気製品を他人に譲ったり、一度使用した紙の裏側を使うなどがリユースである。

そして最後がリサイクル。これは特に枯渇資源の形を変えて「再生利用」することを意味する。エネルギーの投入量は少なくないが、枯渇を先へ伸ばすことができ、さらには、新しく作るよりエネルギー使用量が少なくて済むことも多い。

そんなわけで、ペットボトルのリサイクルより、ガラスビンのリユースを優先して考えたい。





注6)チャモロ料理を隠してバーベキューを供す

チャモロ人達は島内産の食材で作るチャモロ料理を旨いと感じながら、同時にそれを1段低く見たり、それを食べていることを恥ずかしいとも思っているフシがある。それは、島の歴史や戦後の教育などが大きな役割を演じていると思われる。普通我々がチャモロ人の家庭に招待されると、そのご馳走は肉・魚・エビなどのバーベキューと決まっている。ところが、事前にチャモロ料理を食べたいと言うと、喜々として本格的なチャモロ料理を作ってくれる。そしてそれはとても旨い。

本物のケラグィン(酢じめ料理)、シカ肉の刺し身、そしてヤシガニのココナッツ・ミルク煮などの素晴らしいご馳走には、そうやって出会うことができた。

PDF版

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.cyberuls.com/blog/mt-tb.cgi/156

コメントする